新聞記者の勝浦さんに取材を申し込んでみた[神戸新聞社 勝浦美香さん]

今回は、普段取材する側のかたの話を聞いてみたいと思い、神戸新聞社姫路本社佐用支局の支局長 勝浦美香さんに、新聞記者としての働き方や仕事に対する思い、佐用町の印象や私生活について語っていただきました。

知られざる新聞記者の世界とは…

 

地域で埋もれた情報を、伝えたい

−神戸新聞社に入社したきっかけは?

地域にある、いろいろな埋もれた情報を発信したいと思っていました。大学で神戸に来た流れもありますが、神戸新聞社は兵庫県内に多くの支局があり、他の新聞社より細かい情報を発信できると思ったからです。今は紙面で届けるだけでなく、ウェブでも発信できる。そういう点ではどこまでも情報を広げられるし、そうできたらと思っています。

―入社してから佐用支局に来るまでは?

最初は本社報道部に配属され、明石総局に移りました。その後2019年9月1日付で佐用支局に赴任してきました。佐用はこれまで赴任した中で、いちばん田舎ですね。赴任が決まったときは、支局は基本的に1人ですべてやらないといけないので不安な一方、責任感というか、いいプレッシャーも感じました。

佐用の「あたたかさ」を楽しむ

−佐用での仕事はどうですか?

地域に入って、住みながら住民の1人として課題を発信するのは楽しみでもあります。いい意味で田舎なので、地域のおじいちゃんおばあちゃんが世話を焼いてくれる。話しかけると30分は話し込みます(笑)。だから取材がやりやすいですし、地域に入り込みやすいですね。世間話は一見ムダ話のように思われますが、そのときは関係ない話でも、あとで聞いていてよかったと思う情報がたくさんあります。

―赴任して5か月ですが、勝浦さんから見た佐用の特性は?

少子高齢化、過疎化の課題は皆さんご存じですが、佐用にはこれを何とかしようと取り組んでいる人がいる。一方で、シャイな地域性もある。押し切れないこともあるけど、良さももちろんある。そういうことを、新聞社として、丸くとまでいかなくてもうまく発信できればと思っています。

−佐用で暮らしていて、おもしろいことは?

例えば友だちが来たときに、ここに行こう!というスポットが多いわけではないですけど、すごく関わりを持ってくれる地域なので、暮らしとしては田舎だけど寂しくないことですね。あと、良く言えばチヤホヤしてもらってます(笑)。 年配の人が、「あんたみたいな若い人ががんばってるんやなあ!」って言ってくれて、うれしかったですね。

−では、驚いたことは?

関心をもたれていることですね。私はいわゆる「よそ者」にあたる人間ですが、見られているなあと感じる。それはうれしいことですね、記者ですから。見てもらえているということは、ちょっと、まあ、と思うこともありますけど、関心を持ってもらえているということなので、取材のきっかけもできやすいですね。一言で言うと、「あたたかさ」だと思います。仲良くなろうとしてくれている感じがして、こんなに歓迎してもらえるんだと思いました。

あとは、姫新線の不便さです(笑)。都会に比べると、ダイヤに気をつけておかないといけないですね。それから、朝の早さです。防災行政無線の朝の定時放送が6時45分に流れますが、そのあたりから電話がかかってくる。無線の放送が、私にとっては始業の合図です(笑)。

記者と、住民が近い地域

―取材はどんなプロセスでされていますか?

取材ための情報は、入ってくる話題もあれば、こちらから電話をフランクにかけることもあります。取材依頼が入ることもありますし、色々なイベントで会った自治会長さん、施設長さんなどから教えてもらうこともあったり。役場、議員さん、自治会長さんなど、誰に聞いても情報を教えてもらえるおかげで、どんどん道筋が見えてくる。その上で、アポを取り、取材、撮影、記事作成という流れですね。

−前任地と違う点はありますか?

明石や神戸は総局といって規模が大きいので、担当が分かれています。その点、佐用支局では手当たり次第何でも、そして全部を把握していないといけない。それは、自分にとっては広がりがあり、なおかつ苦手分野にも気づくきっかけになっています。今まで見ていなかったことが、全部肩に乗ってきていますね。

あと、ここでは誰に話しかけてもウェルカムな雰囲気なので、困ったことがあると、町内を出歩いて誰かに話しかけます(笑)。行きづまると、町立図書館にも行きます。そこで会った人に話しかけられて、相談に乗ってもらったり。そういう地域ですよね。記者と住民の距離が近いと思います。かつてなく。そういう点では、こういう地域だからこそ記者として接してもらっているなということも感じます。近いからこそ、自覚します。

新聞記者としての、思い

−ネタはどうやって探していますか?

行ったことがないところに行ってみることにしています。行きにくいことや遠いこともありますが、地域の公民館の掲示板にしかない情報もある。公民館の近くを通るときには、掲示板をチラッと見るようにしていますね。

―勝浦さんの、記者としての7つ道具を教えてください。

一眼レフカメラ、神戸新聞社の腕章、パソコン、ペン、ノート、ボイスレコーダー、社用ケータイと、用語ハンドブックです。パソコンは原稿を書くだけでなく、会社に記事を送るのにも必須ですね。取材先によってはボイスレコーダーを使うこともあります。あ、8つですね。

−取材で気をつけていることは?

これは佐用だからということではないですが、みんな考え方が違いますから、自分の考えは出しすぎないようにしています。相手の思想を尊重して話を聞くことを心がけていますね。特に水害や震災など、命や防災に関わる取材の時は、どの人も辛い思いをしているということをいつも念頭に置いています。

−今後、取材してみたいことは?

めっちゃあります。西はりま天文台を深掘りしてみたいし、SPring-8にも行ってみたいですね。過疎や限界集落などの課題についても、随時書いていく必要があるなと思っています。また、いろいろな取り組みを地域でされていますが、どこの地域も高齢化問題に直面している。そういう社会的な課題も取り上げていきたいですね。

―神戸新聞の他にも新聞を読んでいますか?

はい。できるだけ毎日、各社の新聞に目を通すようにしています。図書館には全紙が置いてあるので、そこで読むこともあります。新聞社によって取り上げる記事も違いますし、全国紙の記事はスマートな感じで勉強にもなりますね。他にも雑誌など読むべきだと思ってはいますが、なかなかそこまでは読めていないのが現状です。

佐用の楽しみ方、発見

−休日はありますか?

ありますが、支局は仕事と休日の線引きがあいまいになりがちですね。プライベートで出かけていても記者として接されることもありますし、休みの日であっても、どうしても仕事で出ないといけないこともあります。逆に、原稿を提出したあとの平日は時間ができることもあります。

−プライベートの楽しみ方は?

これまでは趣味を楽しむ時間がなかったんですが、佐用に来てからは逆に、「何をしようか」となっています。最初に佐用に来たとき、夜は暗く、開いているお店も少なくて驚いていましたが、人とのつながりができれば楽しい地域だと思います。先輩支局長さんからも、趣味を見つけるといいよと言ってもらいました。今は、ウクレレに挑戦しています。

 

−最後に、いつも取材する側の勝浦さん、逆に取材を受けてみてどうでしたか?

いやー、難しいですね。いつもは話を聞きながら写真を撮っていますが、撮られているのを忘れて、気がついたら背筋を伸ばすようにはしてました(笑)。質問に対して答えながら、これでいいのかなって不安でしたが、初めてで新鮮でした。楽しかったです!

 

神戸新聞社佐用支局では初の女性支局長として活躍中の勝浦さん。取材されるのは初めてということで、カメラを向けると意識的に姿勢を正してくださっているのがほほえましかったです。質問ごとにたくさんの内容を答えていただき、さすが新聞記者さんだな、と改めて感じました。

また、新しい環境を楽しみつつ、佐用のことを知り、発信していこうという意欲が、彼女の言葉とまなざしから強く伝わってきたのが印象的でした。これからの神戸新聞での彼女の記事がますます楽しみです!

インタビュアー・ライター:ヤマモトトモコ

カメラマン:タニグチヨシミ

 

勝浦美香

徳島県出身。大学卒業後、神戸新聞社入社。本社報道部、明石総局での勤務を経て、2019年9月より佐用支局に支局長として赴任。日々佐用町の情報収集・発信に奮闘。趣味は、始めたばかりのウクレレ。