都市と田舎をつなぐ場所で、事業プランの開発を強化[起業家/社会活動家 中村拓也]

佐用町に住みながら「コバコ」で1ヶ月間に渡り、働いている中村拓也さん。24歳にして3社目を立ち上げようという意欲的な若き起業家が、都市ではなく地方にあるコワーキング「コバコ」を選んだ理由とは? そして中村さんの目指す社会とは。

NTTが主催する「アプリ開発コンテスト」にて優勝

―起業に興味を持ったきっかけを教えてください。

学生の時、僕がプレゼンを担当したチームがアプリの開発コンテストで優勝したんです。僕は当時アルバイトで塾の講師をしていたのですが、塾でオーディエンスに対する目の配り方や人を惹きつける話のコツなど、集団の前で話すテクニックを習得していました。ほとんどのチームが開発に力を入れている中、開発と同時にプレゼンを磨いたことが優勝に繋がったようでした。
そこで審査員の方から「事業とかしないの?」と言われたことが起業に触れたきっかけです。

それまでは研究で学校の教育システムを変えようと思っていたのですが、自分でお金を稼いで自分で学校を作るという選択肢もあるんだなと思いました。

―学校の教育システムを変えようとしていたのですか?

小さな頃から誰かに「これをやりなさい」と言われてやるのが、すごく嫌でした。小学校の文化祭で、クラスでは生き物を題材にした学習系の発表をしていたのに、僕ひとりだけボールを投げて景品がもらえるというゲームの出し物をしたんです。クラス全員が発表をやりたいわけじゃないのに、先生は学習系の出し物に誘導していく。でも僕はやりたくなかった。協調性がないと見なされて先生からは「手が付けられない」と思われていました。

―随分、勇気のある子どもに見えますが。

僕は本質的なことをしてると思ってました。「なんでやりたくないことをやるん?」と。今でももっといろんなことをやらしてくれてたら良かったのに、と思います。多くの人が就職したくないと思ってても就職したり、新たなチャレンジをしないのはそういった経験の積み重ねだと思います。

新しい教育を導入するための、低コスト社会

―学校教育を根本から見直して、新しいチャレンジができるような環境を作るために、教育システムを変えたいということでしょうか。

学校で伸ばしていかないといけない能力もあると思います。でも学校の外にも学びはあって。「これは違う」と思ったときに違う場所へ踏み出せる環境が構築されるべきだと思います。

ただ、教育を変えようと思っても保護者理解が進まないと、新しい教育は導入しにくいという面もあります。その理解を得ることにコツコツと努めるよりも、そうせざるを得ない環境を作ることで新しい教育の必要性が生まれる風潮にしたいと思ってます。

―教育を変えるという目的から、最初のスタートアップ「自動調理ロボット」へと帰結したのはどうしてですか?

教育システムの変化は、AIや自動化技術が進むことにより、単純労働がなくなる事で実現できると考えています。単純労働がなくなると、そこに費やしていた時間や労力を創造的な仕事に充てざるを得ない流れになる、と僕は予想しています。
また、収入や情報格差的に恵まれてなくても、充実した教育が受けられる社会にしたいという思いもありました。そういった時に「生活」そのものをきちんとサポートできないと、教育は二の次になってしまう。

AIの推進と生活コストの安定化(食の効率化)の両面から考えた結果、「自動調理ロボット」の開発に至りました。これができれば、汎用型ロボットとして大きな市場になるという思いもありました。

社会の変革を目指す起業家が、コバコで働く理由は?

―起業家の中村さんが、なぜ地方のコワーキングで働くのでしょうか。

地方の調査ができることです。地方が抱える課題や現状を知れるということが一番にあります。また田舎は都市に比べると生活がしやすい反面、なかなか仕事がないんですよね。だからこそ田舎で仕事をするとなるとココしかないと思います。地方にコワーキングスペース自体がほとんどない中で、コバコは田舎に住みながら都市と繋がれる場所です。そんな場所って他にないと思います。

―起業家にとってもメリットが多い?

そもそも起業家は最初はお金がないので、生活していくのは大変だと思います。都市でやればやるほど大変です。でも事業のプランが決まってるなら、田舎に来て生活不安をなくした上で、開発に力を注ぐ方がいいのではと思います。

―最後に。中村さんの今後の夢はなんですか?

僕の目標は自分の友達を増やしたいってことなんです(笑)。社会を変えて行こうと考えている友達を増やしたい。そのなかで(コバコの)谷口さんは田舎にコワーキングスペースを立ち上げ、行動力を持って理念を実現しているので、とても共感しています。


中村拓也

1994年3月28日神戸市生まれ。大阪府立大学中退。在学中に「第1回NTT-WEST学生向けアプリ開発コンテスト」にて最優秀賞を受賞。その後、自動調理ロボットのための画像認識ソフト「F ROBOTプロジェクト」、自動調理ロボットの導入を目指して和食ビストロの飲食店「Pot’s drop」を立ち上げる。現在新たに、健康診断の結果に対し医師からのコメントがもらえるアプリ「Dr. Health Check」を開発中。