築170年の古民家が「たまり場」になるまで。[「古民家ダイニング道満」片岡さん夫妻 ]

今回は、佐用町才金にある「古民家ダイニング道満」のオーナー片岡さん夫妻に、移住のきっかけ、道満の誕生から今後の展望までざっくばらんに聞いてみました。

田舎ぐらし=自分の食いぶちは自分でつくる

-佐用に移住された経緯を教えてください。

今から12年前の2008年に佐用に来ました。40代のころ、当時働いていた東京の大手町を歩きながら、田舎で暮らしたいなあと思っていたんです。僕は、田舎ぐらし=自分の食いぶちは自分で作るものという認識ですので、転勤した先々で田んぼがついている物件を探していました。そのとき、「田舎暮らしの本」という月刊誌の広告を見て、不動産屋さんに案内してもらったんです。それまで20〜30軒の物件を見てきましたが、田んぼ付きのこの物件に即決しました。

-実際にお米は作られましたか。

移住してから7〜8年間はキヌヒカリを自然農法で作っていました。体力がなくなってきたのと、ヒエ、アワなどの雑草の力に負けてしまい、あきらめました。でも自分で作ったお米は美味しかったし、お米が自分で作れたときはうれしかったですね。

「古民家ダイニング道満」の誕生

-「道満」を始めるきっかけは?

時間があったので、何か始めたいと家内と話していました。当時は佐用にカレー専門店がなかったこと、また、カレーのレシピを手に入れられたこと、家内が昔カレー屋で働いていたことなどが重なり、カレー屋を始めることにしたんです。6年前に、納屋を改築して開業しました。ただ、少し狭かったので、母屋を修復して移転しました。今では40人ほどのかたにご利用いただけるようになりました。

母屋は、地元の棟梁さんに協力してもらって改装しました。ここは天保14(1843)年に建てられたという記録がありますので、築170年以上です。もうぼろぼろでしたけど、自分たちも一緒に作業をして、直しました。大変でしたね。本当に、棟梁さんのおかげです。

-道満を始めてみて、どうですか?

初めて6年経ちますが、思っていた以上に楽しいです。このお店は人と人とが繋がるご縁が多くあり、お客さん同士がおもしろい出会いをされて、新しいコミュニティができています。それを見ているのも楽しいですね。

芦屋市のマンションに5年ほど住んでいたとき、友人は5〜10人ほどでした。つながりが薄く、他の住人さんともあまり会わなかったんです。今はカレーの仕事を通じて、400〜500人から1,000人くらいの人と知り合えているかもしれません(笑)。満足度は最高ですね。

とはいっても、楽しいことばかりではない・・・

-もし田舎に来て飲食店をやりたいという人がいたら、どのようなアドバイスをしますか。

厳しいとしか言えないです。本業があって自分の食いぶちは何とかなるという人なら大丈夫だと思いますが、商売で何とか一旗、というのは難しいと思います。都会のつながりを持った上で、例えばI Tができるといいですよね。農村のいいところは、自分の食いぶちが現金ではなく現物で何とか確保できるところなので、その人のライフスタイルや人生の価値観が大きく問われると思います。

「道満」=「人のたまり場」として、後世に引き継ぐ

-道満の今後の展望を教えてください。

これまでにワンニャン同伴コーナーや、お店の裏には無料のドッグランを作りましたが、それに加えて今は、お店の前にガーデンと、納屋にゲストハウスを作っています。お客さんからは、来るたびにちょっとずつ進化していると言われますね(笑)。また、春と秋に開催しているイベント「道満市」を増やしたり、月に1回くらいワークショップを開いたりしたいと思っています。イベントをすることで、この山奥に来る道中で佐用の町のいろいろなところを見ながら来てもらえますし。ワークショップも、いろいろな技能を持った人がたくさんおられるので、何か形の残るものを作りたいですね。人が集まる機会を増やして「たまり場」にしていきたいです。

そして、僕たちも高齢なので、せっかくここまでやってもきたし、そろそろ引き継いでくれる人を考えないといけない時期にきています。僕らの理想としては、リレー形式ですね。まず体力も年金収入もある団塊の世代に引き継いでもらい、その後若い人に引き継いでもらえたらいいな、と思っています。

-田舎ぐらしを考えている人に何かメッセージはありますか。

迷っているなら、体力のあるうちに1年でも早く田舎ぐらしを始めた方がいいです。1日でも多く人生の余暇を楽しんでもらいたいと思います。

憧れの田舎ぐらしも楽しいことばかりではない、という片岡さん。でも人が集っているのを見るのが楽しいと嬉しそうにお話しされているのが印象的でした。笑顔がステキな片岡さんご夫妻が経営する「古民家ダイニング道満」にぜひ足を運んでみてください。

 

インタビュアー:ヤマモトトモコ

ライター:タニグチヨシミ

カメラマン:ハラダススム

 

【店舗情報】

「古民家ダイニング道満」

住所:佐用郡佐用町才金796-6

TEL:0790-87-0839

営業:木・金・土・日 11:00-15:00

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